患者さんを「診ず」、「見る」お医者さん
病理医も放射線科医も、直接患者さんを診察・治療しません。
一方、臨床医が診療行為を行う過程で必須な診断のための情報を提供したり、
場合によっては診断を確定したりします。
臨床医は、患者さんの臨床的所見から病状を推定し、処置を決定したり薬を処方したりします。
しかし、治療が難しかったり、手術が必要だったりする病気の場合、
推定に基づいて治療を進めることは危険です。
そこで、病理医や放射線診断医が、患者さんの病変部を何らかの方法で「見て」、
より確かな診断を行います。
このような病気の例としては、たとえばがんがあります。
実際、病理医や放射線診断医の仕事の大部分は、
患者さんの病変部が悪性腫瘍か(つまり「がん」か)判別することです。
(もちろん腫瘍以外の病変を診断することもあります)
このように、診断対象も目的も似通っている病理医と放射線診断医ですが、
その手法や得られる知見は、全く異なります。
病理医
病気とは正常状態からのズレであり、ズレには必ず原因があります。
ズレから体にどのような変化が起こり、
最終的にどのように病気として表出してくるか調べる学問があります。
それが病理学です。
病理医は、患者さんの病状を直接的に観察し、
病理学の知見をもとに、疾患名を確定します。
患者さんの病状を直接的に観察する方法は、おもに2つです。
- 患者さんの組織切片や細胞を顕微鏡で観察する
- 患者さんの体液を生化学的に解析する
病理医は以上を総合して診断を行います。
病理診断は、臨床的所見による推定よりも高い精度で診断を行うことができ、
これによって疾患名が確定します。
臨床医にとって、病理診断の結果や病理医の意見は非常に貴重なものであり、
実際、臨床医はこれらを重要視する傾向にあります。
なぜなら、疾患名が確定しなければ、患者さんを治そうにも治療の方針が立てられないからです。
また、病理医は、病理診断のほかにも
患者さんの治療方針を決める会議(カンファレンス)に参加し、意見を述べたり、
治療も及ばず亡くなった方のご遺体を解剖し、
診断が適切であったか、治療効果があったか、直接の死因がなんであったかを明らかにしたりします。
後者の解剖を病理解剖といいます。
病理解剖によって、医学の発展に与する知見が得られたり、医療の技術向上に役立ったりします。
このように、病理医は患者さんと直接接する機会がほとんどない一方で、
お医者さんの仕事や医学の発展のための仕事をしているので、Doctors of Doctorと呼ばれたりもします。
ところが、2008年になって病理医の仕事は
病理診断科という診療科名を標榜できるようになりました。
これは、病理医が患者さんを見てよくなったということ、
また病理医の仕事に保険点数がつくようになったことを意味します。
そこで、最近は病理診断を専門として開業する病理医さんが増えてきました。
(以前の病理医は勤務医のみ)
医学の発展や、お医者さんの業務に必要不可欠な病理医ですが、
医師全体の0.8%、絶対数は日本全国に2000人程度しかいないといわれています。
複数の診療科を抱える病院であるにもかかわらず、病理診断科がない病院もたくさんあります。
その場合、病理医がいる病院から定期的に派遣されてくるか、
病理診断を病理がいる病院に依頼したりなどで対応することになります。
病理診断ができないと病院業務そのものに支障をきたすので、
病理医の不足は非常に深刻な事態であることは予想できます。
最近、フラジャイルという漫画・ドラマの影響で病理医志望の医学生が増えてきているようです。
ドラマの影響で志望者が増えるということは、
従来、その実態や魅力が正しく伝わっていなかったということですね。
少しでも事態が改善に向かうとよいですね。
ちなみに、病理診断には弱点があります。
それは、侵襲度が高い(=患者さんを傷つけてしまう)ということです。
病理診断は患者さんの組織切片や細胞を必要としますので、
必然的に患者さんを傷つけてしまうことになります。
そこで、より侵襲度の低い方法で病変部を観察する診断法を、
病理診断に先駆けて行われることも普通に行われます。
放射線診断医
病理診断と並んで主要等の診断に威力を発揮するのが、
放射線診断です。
放射線診断医は、レントゲン像(2次元)、CT像(3次元)から病変が疑われる場所の様子を読影し、
射影と形状をもとに診断します。
このような診断法では、
レントゲンやCTを撮影するには患者さんにX線を照射するので、放射線診断と呼ばれますが、
近年、MRI(患者さんを強い磁場の中において核スピンの揺らぎを測定する装置)など、
放射線を用いないで得られた画像、診断対象となります。
そこで、放射線診断医はより本質的な表現である「画像診断医」と呼ばれたりもします。
放射線診断が最も得意とするのは、
「この病変は悪性ではない/異常病変とは言えない」と言うことです。
このように診断されれば、その後の処置が不要であるとわかります。
一方、もし悪性である可能性を否定できない場合、
より侵襲度の高い検査(病理診断など)や処置(手術)を行うなどの必要性がでてきます。
画像診断では、患者さんを放射線や強い磁場の中にさらすので、
まったく侵襲がないとはいえません。
しかしながら、放射線に関しては、
健康を損なわない程度に定められた被ばく量基準以内に収めるという一応のルールがありますので、
そこを守る限り病理診断より低侵襲であるとされています。
そのため、放射線診断は病理診断の事前になされるのが通常です。
一方、患者さんの組織を直接的に見るのではなく、
あくまで電磁波を照射したことによる写像を読み取るだけですので、
患者さんの組織学的な異変をとらえるには不向きです。
そのため、病理診断と異なり、疾患名を確定させることはできません。
なお、放射線診断は診療科として標榜してよいことになっていますので、
読影を専門にして開業している放射線診断医もいます。
(ほとんどの放射線診断医は勤務医ではありますが)
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